2020年度から小学校でプログラミング教育がはじまりました。
小学生がプログラミング!?と思われる方も多いと思います。
近年は学校外での習い事でも「プログラミング」の人気が高まっています。
機械学習による人工知能などコンピュータの活用がますます拡大していくなかで、将来を担う子どもたちがコンピュータとその仕組みを知るために「プログラミング」を学ぶことはとても大切です。
ここで、子どもとプログラミングに関する研究の歴史を振り返ってみたいと思います。実は、その歴史は長く、1960年代に米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らによってはじめられましたことにさかのぼります。
いまから50年以上前の話です。もちろん、その頃には現在あるようなパーソナルコンピュータは存在しません。一部屋を占有してしまうほどの大きな計算機を使って研究ははじめられました。
さまざまなコンピュータの活用が研究されるなかで、教育でのコンピュータ活用研究もすすめられました。しかし、そのほとんどはコンピュータを教師代わりに使う(子どもがコンピュータに教えられる)ものでした。
そのなかで、MITの研究者は子どもがプログラミングする(子どもがコンピュータに教える)ことこそ、コンピュータだからこそできる教育だと考え、子ども向けのプログラミング言語「Logo」を開発します。そしていま、Logoの研究を元に開発された「Scratch」が多くの小学校で使われています。
子どもがプログラミングをすることはどんな意味を持つのでしょうか。
私自身が最も共感できたのは、MITの研究者がプログラミングを「ものづくり」のひとつと考え、ものづくりのなかに学びがあると考えたことです。
これをConstructionism(コンストラクショ二ズム)とMITのシーモア・パパートらは名付けています。
心理学者ジャン・ピアジェのConstructivism(構成主義)を発展させたパパートらのコンストラクショニズムは、ごく簡単に言うと「知識は教えられるものではない。学習者が自らつくりだしていく。そしてこれは、ものづくりをしている際に起きる。」ということです。
ものづくりの試行錯誤のなかでの発見と考えれば、多くの方が経験的に納得できるのではないでしょうか。
はじめは失敗しても、間違えてもいいのですが、自分が思うようになおしていくなかで、「ああこういうことだったんだ」「こうしたらうまくいくんだ」と気付くこと、と言い換えられるかもしれません。プログラミングはこのような試行錯誤に適したツールだと、MITの研究者は考えていました。
子ども向けのプログラミングツール「Scratch」の開発者で、MITでのプログラミングと子どもの学びの研究を引き継いでいるミッチェル・レズニックらは1996年に出版されたコンストラクショニズムを元に実施された教育実践研究をまとめた著書のなかで、次のように述べています。
“Learners are particularly likely to make new ideas when they are actively engaged in making some type of external artifact ‒
be it a robot, a poem, a sand castle, or a computer program ‒ which they can reflect upon and share with others.
Constructionism involves two intertwined type of construction; the construction of knowledge in the context of building personally
meaningful artifacts.”
Kafai, Y.B. & Resnick, M. (1996) “Constructionism in Practice : Designing, Thinking, and Learning in A Digital World”
「実際に何かのものづくりをしている際に、新しい知識は生み出されます。
自らが振り返ることができ、他者と共有できるものづくり、それはロボット、詩、砂の城、コンピュータプログラムかもしれません。
コンストラクショニズムは、個々にとって意味のあるものづくりのなかで、知識を構成していくという、2つのコンストラクションを含んでいます。」(訳:森秀樹)
コンピュータとともに育ち、生活している現代の子ども達だからこそ、プログラミングは子ども達にとって意味のあるものづくりとなりやすいのだと思います。
まなびとものづくりは、スキルとしてのプログラミングに留まらずものづくりを通じた学びの手段として、プログラミングに子ども達が取り組む機会をつくっていきます。また、1人1台の情報端末を活用した学校での新しい学びづくりを支援していきます。
株式会社まなびとものづくり(東工大発ベンチャー認定第103号)
代表取締役 博士(人間科学) 森 秀樹